2006-06-01から1ヶ月間の記事一覧

石黒達昌『冬至草』

ハヤカワSFシリーズJコレクション新刊。 現役の医師でもある石黒達昌は「文學界」などの純文学誌を中心に活動する作家。本作品集には広い意味での医学を扱い、濃密な死の匂いと共に科学の営みを静かに描いた作品群が収められている。「希望ホヤ」(SFマガ…

チャールズ・ストロス『シンギュラリティ・スカイ』

21世紀半ば、究極のAI〈エシャトン〉が出現し、ワームホールによって地球人の9割が銀河の数々の星へ強制転移させられてから2世紀が過ぎた未来。東欧・ロシア・ドイツの保守的な人びとが集中的に移された星では、通信やテクノロジーの発展が厳しく制限され…

ジェフリー・A・ランディス『火星縦断』

ハヤカワ文庫SF/小野田和子訳。ちゃんと機械が壊れるリアルな火星冒険SF。 地球環境においても、それなりにきっちりとメンテナンスしているつもりの設備や機械でも、その盲点を突いてあっさりと壊れてしまいます。老朽化した設備なんざ、中途半端に直すと他…

今日買った本から

アン・ハラム『リンドキストの箱船』(野口百合子訳 文藝春秋刊) ギネス・ジョーンズの別ペンネーム。ギネス・ジョーンズはディック記念賞、クラーク賞、世界幻想文学大賞を受賞したことがあるイギリスの中堅作家。海外SFおたくにはわりと名前が知られている…

ブライアン・W・オールディス『爆発星雲の伝説』(浅倉久志訳 ハヤカワ文庫SF)

表題を読み終えた。「賛美歌百番」を含む8篇を集めた短篇集。強面の作品揃いかと思ったら表題作を含めて割と軽めの作品が多かった。表題作は、各種動物の遺伝子が混合し奇妙な知的生命体の闊歩する未開の惑星に手違いから落ちた金融業者が、口先八寸でその惑…

ロン・グーラート『ゴーストなんかこわくない』

軽妙なコメディ小説。 読み終えて何も残らないが、これはこれで。こういうのも必要ですよ(SUWA解説っぽく)ゴーストなんかこわくない―マックス・カーニイの事件簿 (扶桑社ミステリー)作者: ロングーラート,Ron Goulart,浅倉久志出版社/メーカー: 扶桑社発売日…

『どこにもない国』

柴田元幸編の幻想文学アンソロジーである表題は6/15に出るらしい。まあ、近所の書店には置かないだろうなあ…… 来週末、SFファン交流会ゲスト出演で東京へ行くので、そこで買おう。 http://www.shohakusha.com/tankoubook/shinkan/0116-5.htmどこにもない国…

ジョナサン・キャロル『パニックの手』(浅羽莢子訳 創元推理文庫)

表題を読み終えた。帯の傑作短篇集は嘘ではない。個人的に最も凄みを感じたのは、なんでもきれいに片づけてしまう掃除婦の真の姿、また世界の成り立ちを描いたノヴェラ「おやおや町」。こういうネタで書かれた作品はあるけど、書き方と最後のひねり方はこの…