2000年代海外SFベスト

2000年〜2009年に原著が刊行され、かつ邦訳のある作品を対象に2000年代英米SFベストを選んだ(順不同)。()の中は訳者、刊行レーベル、日本での刊行年および原著発行年を記述した。なお、短篇集は2000年以降に原著が刊行された/あるいは邦訳が刊行された日本版オリジナル短篇集であっても、2000年以降発表された作品を含むものに限定した。

バチガルピ『ねじまき少女』とストロス『アッチェレランド』は現代を外挿した未来のヴィジョンを描ききったという点で共通する作品。チャンは言わずと知れた現代SF短篇の最良の書き手。奇想と物語性のバランスがたまらない。レナルズ、マクラウドの両名は2000年代前半を牽引した《ニュー・スペースオペラ》の書き手。レナルズは短篇ではキレの良いグロテスクかつ意地の悪い作品を書くので、短篇集を推す。マクラウドは賛否両論別れるがオフビートなギャグがくせになる作品。

2000年代の翻訳SFシーンは奇想短篇が牽引した。その最良のものとしてリンク『マジック・フォー・ビギナーズ』を、また、新たな書き手としてミエヴィルを選んだ。ウィリス、ウォルトンは圧倒的なストーリーテリングの上手さに。特にウォルトンは現代政治への怒りを歴史改変ミステリの中で、エンターテイメントとして昇華した傑作。2000年代の翻訳で目立ったミリタリSFではキャンベルがそのSF性、エンターテイメント性で群を抜く。三次元的かつ相対論的戦闘シーンを十全に描ききった点は見事。

ねじまき少女 上 (ハヤカワ文庫SF)

ねじまき少女 上 (ハヤカワ文庫SF)

ねじまき少女 下 (ハヤカワ文庫SF)

ねじまき少女 下 (ハヤカワ文庫SF)

アッチェレランド (海外SFノヴェルズ)

アッチェレランド (海外SFノヴェルズ)

あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)

あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)

銀河北極 (ハヤカワ文庫 SF レ 4-4 レヴェレーション・スペース 2)

銀河北極 (ハヤカワ文庫 SF レ 4-4 レヴェレーション・スペース 2)

ニュートンズ・ウェイク (ハヤカワ文庫SF)

ニュートンズ・ウェイク (ハヤカワ文庫SF)

ジェイクをさがして (ハヤカワ文庫SF)

ジェイクをさがして (ハヤカワ文庫SF)

航路 上 (ヴィレッジブックス F ウ 3-1)

航路 上 (ヴィレッジブックス F ウ 3-1)

航路 下 (ヴィレッジブックス F ウ 3-2)

航路 下 (ヴィレッジブックス F ウ 3-2)

英雄たちの朝 (ファージングI) (創元推理文庫)

英雄たちの朝 (ファージングI) (創元推理文庫)

暗殺のハムレット (ファージング?) (創元推理文庫)

暗殺のハムレット (ファージング?) (創元推理文庫)

バッキンガムの光芒 (ファージング?) (創元推理文庫)

バッキンガムの光芒 (ファージング?) (創元推理文庫)

彷徨える艦隊 旗艦ドーントレス (ハヤカワ文庫SF)

彷徨える艦隊 旗艦ドーントレス (ハヤカワ文庫SF)

彷徨(さまよ)える艦隊〈2〉特務戦隊フュリアス (ハヤカワ文庫SF)

彷徨(さまよ)える艦隊〈2〉特務戦隊フュリアス (ハヤカワ文庫SF)

彷徨える艦隊3 巡航戦艦カレイジャス (ハヤカワ文庫SF)

彷徨える艦隊3 巡航戦艦カレイジャス (ハヤカワ文庫SF)

彷徨える艦隊〈4〉巡航戦艦ヴァリアント (ハヤカワ文庫SF)

彷徨える艦隊〈4〉巡航戦艦ヴァリアント (ハヤカワ文庫SF)

彷徨える艦隊〈5〉戦艦リレントレス (ハヤカワ文庫SF)

彷徨える艦隊〈5〉戦艦リレントレス (ハヤカワ文庫SF)

彷徨える艦隊〈6〉巡航戦艦ヴィクトリアス (ハヤカワ文庫SF)

彷徨える艦隊〈6〉巡航戦艦ヴィクトリアス (ハヤカワ文庫SF)