私の結果

ちなみに評価軸としては、+3…オールタイムベスト級, +2……年間ベスト級, +1……年間10位以内のクラス, 0……ふつう, -1……傑作選に入れるのはどうか, -2……いかがなものか, -3……愚作。

 「ノックスの十戒」の「探偵小説には、中国人を登場させてはならない。」というルールを題材に、量子論的味付けを加えたバカ時間SF。傑作。

  • 「エイミーの敗北」林巧……0

 凡庸。年間傑作選レベルとは言い難い。

 フランケンシュタインの怪物を題材に取ったもの。雰囲気を切り取る部分は上手いが、寓意があまりにも前面に出てきているところは苦手かも。頭のいい人が書いた小説。

 河川争奪という地質学の実際の現象を題材に、バカ極まりないながらも説得力のあるアイディアで描いた傑作短篇。小林泰三の最高傑作だ。

 兵役の替え玉となった男を描いた短篇。文芸寄りの海外SFファンが好むタイプの凝縮された非SFのSF的好篇。

 津原泰水もそうだけど、書き方の上手さは武器だわね。

 日記エッセイと見せかけて、実は虚実織り交ぜた日記SF。分数アパートも良いが、延々と写真を送ってくるFさんが怖い。

  • 「眠り課」石川美南……+1

 短歌。とぼけた味がいい。

 丹念に描かれたノンフィクション。星一の底知れなさ。

  • 「全てはマグロのためだった」Boichi……-1

 展開とギャグがいくらなんでも古すぎる。個人的には掘骨砕三「白い竜」の方が良かった。……と、いろいろと言いたくなるものの、コメントにはグッと来ました。

 イラストも収録したのは正解。たいへん下品で下らなくて、本アンソロジーに良い影響を与えている。

  • 「笑う闇」堀晃……+2

 近未来の梅田(たぶん2020年頃)を舞台に、とある漫才を描いたロボットSF。未来の梅田を丹念に描写し、起こりうる未来としてリアリティを感じさせる筆は近未来SFの理想型と言える。

 壮大ではあるし、手堅いが、どうにも肌に合わない。個人的には小川一水の前向きさに根拠があるのかという疑念があるからじゃないかと思う。

  • 「ムーンシャイン」円城塔……+1

 はっきり言ってわからない。点数付けを放棄しようかと思ったが、こういうアイディアで小説を書いてしまうところはすごい。

 007をモチーフに意識の問題を描いた好篇。もっと書いて欲しかった……

円城塔のスーパーハードSFや、津原泰水の非SFのSFといった硬派な作品の一方で、「アキバ忍法帖」のごときたいへん下らない作品まで意図的に幅を広げたラインアップは野心的だ。惜しむらくはもう少し良い漫画が入ればというところだけど、実際のところ短篇SF漫画というのは小説以上に母数が少ないので難しいことは確かなんですが。